『薔薇の名前』の舞台は中世ですが、この時期に作られた写本等に頻繁に出てくる図案の一つに薔薇園と聖母マリアの組合せがあります(そういえば、薔薇も聖母マリアもゴシックロリータととっても相性がいいですよね!)。薔薇は、キリスト教のシンボリズムにおいて、「聖母マリアは純潔によって白く、慈悲によって紅い」として、聖母マリアの持ち物とされています。
ユングが『心理学と錬金術(1)』
更に、薔薇の秘密めいたイメージをもう一つ。
こちらは古代ローマの風習ですが、秘密の会議を行う際には部屋の天井に薔薇を吊るしていたとか…これが元になって、sub rosa(薔薇の下に)という表現は、他言無用つまり秘密を表す言葉となりました(sub rosa自体はラテン語ですが、大き目の英和辞典にも載っている表現ですので見てみてくださいね!)。
ヨーロッパは、古代ローマ帝国期の後、中世になだれ込みますが、薔薇の持つ「秘密」のイメージはそのまま持ち込まれたようですね!
では、本題の『薔薇の名前』はというと、最後が
stat rosa pristina nomine, nomina nuda tenemus. (原初の薔薇は名にとどまり、われわれは裸の名を手に入れる)
というラテン語の詩で締めくくられています。『薔薇の名前』における薔薇は、主人公が生涯たった一人愛した女性を象徴すると共に、普段は自分でも意識できないような、自分の内奥の繊細ななにかを象徴しているようにも思えます。
このように見てきますと、『薔薇の名前』は、その舞台設定のみならず、テーマ自体がゴシックロリータの本質的な部分と重なるのかもしれません。
そういえば、『薔薇の名前』の作者ウンベルト・エーコは美学者でもあります。だとすると、美意識を重んじるゴシックロリータと『薔薇の名前』の波長が合うのは自然なことといえなくもありませんね!